随分前の話ですが、県外の有名な雑貨屋さんの店主とお話させていただいた時の事です。
そのお店にはスタッフが10人くらい働いていて、「雑貨屋でスタッフを10人も抱えるって凄いですね」。
という話をしました。まぁこういうお店で働きたいと思う気持ちはよくわかる。
と言うくらい素敵なお店ですので、不思議ではないのですが、その店主は「でもすぐ辞めてしまうんです」
と言うのです。これは意外でした。雑貨が好きで、セレクトもこだわりが感じられ、そういう
世界観が好きな方が集まるであろうお店でも、辞めてしまう人が多いのはなんでだろう?
聞くと「みんな「仕事」として雑貨を扱う事ができないから」だと言うのです。「仕事」として扱えないとは?
「求人を出すとたくさんの応募がある。おしゃれで、世界観や知識もある人が沢山いるけど、私はスタッフにただ
仕事をしてもらいたい。その人の世界観、価値観、センス、セレクトなんて期待していないから、掃除を丁寧にやるとか、
お客さんに丁寧に接するとか、当たり前の事をできないのに、それ以上の事ばかりやろうとするから現実と理想で押しつぶされる
人が多いのです」とおっしゃっていました。まさに、「雇う側」と「雇われる側」の視点の違いですね。
これには思い当たる節がありました。自分の修行時代がまさにそれでした。
将来自分の店をやるという思いが強くあったため、自分ならこうするのに、こうしたらいいのに、という思いが強く、
その店の店主が求める仕事が全くできなかったのです。結局、怒られるのですが、「なんで?」という気持ちがいつもあり、
店主の言っている事が理解できずイライラして。。今思えば、まともに仕事ができていないぶんざいで、頭でっかちに
なっていたのです。
人から給料をもらっているうちは、その会社やその人の望む事ができなければ認められないし、
認めてもらうにはまず、相手の望む事が最低限できなければいけません。それから自分を出せばよかったのです。
今振り返ると、こんなスタッフに給料を支払わせて本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
*おかげで今があります。
先の雑貨店の店主は、10年働いてくれたらハワイ旅行でもプレゼントしたいわ。とおっしゃっていました。
それくらい一つの仕事を続けるのは難しいんだろうなと、その時は感じました。
そんな経験があったからか、
僕はスタッフにコーヒーの事をあまり多く望みません。逆にマニア級に詳しければ絶対採用しないでしょう。
何も知らなく始めた仕事でも、コツコツ3年も働けばプロ並みに知識は身に付くものです。
これは何の仕事にも当てはまるのではないでしょうか?
「高い目標が、その人を苦しめる事にもなる。」
と、イチローが言っていました。いきなり山のてっぺんにはたどり着けないので、
何事も段階を経ていく事が大事だと思いました。