コーヒーを淹れる方であればわかると思いますが、粉にお湯を注ぐとプクーっと粉が膨らみますね。
見ているだけで美味そうにみえるあのドーム。いわゆる新鮮な証拠と言われていますが、実はこれは
『半分正解で、半分間違い』です。
先日お客さんにも同じ事を言われたので、簡単に説明しようと思います。
コーヒー豆を焙煎機で焙煎すると、もともと12,3%の水分を含む生豆から水分が抜け、
化学変化によってコーヒーの成分が分解または損失し、新たな揮発性物質を生成していきます。
その過程で豆の内部は拡張し、ハチの巣のようなハニカム構造になります。この時、コーヒーの
成分は空砲の内側や外側に張り付き、炭酸ガスが閉じ込められます。空砲の大きさは0.005㎜程。
この状態の粉に熱水を注ぐことで閉じ込められた炭酸ガスが外に放出され、上に溢れ出たものが
ドームの正体です。炭酸ガスは、焙煎した直後から少しずつ蒸発していきますので、
よく膨らむ=焙煎から時間が経っていないという考え方は正解です。
ですが『新鮮』という考え方であれば、焙煎からの時間より、
『豆が収穫されてから』の時間の方がむしろ重要です。
コーヒーは農作物ですので、鮮度が命です。お米に新米があるように、コーヒーにも新豆があり、
どちらが新鮮か?と聞かれれば言わずもがな。
残念ながら、パッケージを見ても収穫年は記載されている事はほどんどないと思いますので、
消費者は、こういった豆の膨らみを見て、「あぁ新鮮!」と思うかもしれません。
実は、去年、おととしの古い豆、ローグレードな汎用品、ロブスタ種(缶コーヒーなどの原料)なども
焙煎したてであればプクプク膨らみます。よって、豆の膨らみ=鮮度ではないという事をよく理解しておいて
ください。そしてもう一つ、焙煎の度合いによっても豆の膨らみ方は大きく違います。
先に述べた炭酸ガスの発生は、焙煎度が深いほど多く、浅いほど少ないため、いくら新鮮な新豆であっても、
煎り具合が浅ければ膨らみは少ないです。よって、豆の膨らみ方でその豆が新鮮どうかは図れませんし、
豆が膨らまなくても、新鮮な豆である事は往々にしてありますのでご注意ください。
『 豆がよく膨らむ 』 = 『 焙煎からの日にちが短い or 煎り具合が深いだけ 』*新豆かどうかはわからない
『 豆が膨らまない 』 = 『 焙煎から日が経っている or 煎り具合が浅いだけ 』*新豆かどうかはわからない
という事です。きほんのき、でした。