【連載】ミントグリーンの空の下  第三話 ボイトレやろうぜ!

「3月9日ライブ」

 

 

これは我々のLINEのグループ名です。(でした)

リーダーが(ジョニー氏)「こういうのは、もうケツを決めないとみんな動かないからね」という破天荒な、いや「ロック」な、いや「パンク」な事を言うもんだから、

こうやってライブってやるもんなんだ、と初心者の私は思っていました。それにしてもです。初心者つかまえていきなり3ヶ月後にライブですか?(この時2022年12月中旬)

まだバンド名も決まってないのに・・。

でもやるからには全力で!がモットーの私の心は決まりました。全力で宮本浩次になる!よし、まずは歌の練習。第一話でも書いた通り→  第一話から読んでみる  歌は学生の頃、合コンで

ブイブイ言わせていたので(言ってくれていたので)少々自信があるぞ。とりあえず自分の歌を録音して聞いてみるか。曲は「風に吹かれて」がいいかな。ん、ん、ん。(咳払い)

 

♪ 輝く太陽は俺のもので きらめく月はそうお前の涙・・

!!!!! 何これ、これが本当に俺の声???? 気持ちわるっ!!!

え、え、イメージと全然違うんだけど?自分の歌声の気持ち悪さにめまいがしそうでした。自分の歌を録音して聞いた事は生まれて初めてでした。よく言いますが、自分が聞いている声と、

他人に聞こえている声はまったく違うと。しかしここまでとは・・。マズいな・・これでライブ?バンド?やっぱりやめときませんか・・・。ただただ申し訳ない、迷惑をかけてしまう・・。

そんな思いが駆け巡ります。多少あった自信は地に落ち、現実を知った私はますます不安に襲われます。歌も、ギターも素人レベル、いやいやライブとか言ってられませんて。。

 

 

 

 

 

「 ボーカルってアナウンサーみたいだな 」

 

 

 

 

 

それでもメンバーは練習の度に「いいねー」「いいよー」と盛り上げてくれます。なんてやさしいの・・。みんながこうやって言ってくれるのであれば、俺もみんなを喜ばせる

ように歌いたいと、だんだん思うようになってきました。みんなが一生懸命演奏してくれて、みんなを代表して歌を担当するわけなので、俺が中途半端だとそれこそメンバーに迷惑をかけて

しまうのではないか?曲に込められた想いをお客さんに伝える役目はボーカル。なんかニュースを読むアナウンサーみたいだなと思いました。沢山の人が取材して映像や記事にまとめたものを

最後に視聴者にわかりやすく、丁寧に伝える役目。最後はその人の言葉によって視聴者は良くも悪くも受け止める。伝え方次第、そのアナウンサーの印象次第では、ニュースの伝わり方も変わって

しまうものです。これは、思ったより重要な役目だぞ。

 

 

 

 

 

「 年下の先生から学んだたいせつな事 」

 

 

 

 

 

 

そう思った時に一番初めにやった事、それは「ボイストレーニング 秋田」で検索。

そう、ボイトレに通う事にしました。数あるなかからとりあえずお試し体験のできる「 シアーミュージック 」を選びました。結論から言うと3ヶ月ちょっとで卒業してしまうのですが、

これも人生初の刺激的な経験でした。自分がボイトレをするなんて、3か月前までは想像すらできませんでしたが、何はともあれ経験です。個室に入って先生とは画像越しで会話をするシステム。

先生は指名できて、通う回数も決められます。とりあえずライブまで時間がないので、月3回コースを選択。「ネイネイネイ」とか「ノウノウノウ」とか「ウィウィウイ」とか奇声を発しながら

色んなエクササイズを学ぶ日々。そんな中、先生に言われた事でとても印象に残っている言葉があります。(先生は大学生)

「(ここには)色んな人が来ますよ。本気で歌手になりたい人、カラオケでうまく歌いたいという人。児玉さんみたいにバンドでボーカルやっている人。でも

ここに来たからうまくなるわけじゃないです。ここにきて学んだ事を自分で何回も練習するからうまくなります」と。は~、その通りだと思います、先生。これはもう仕事にも

そのまま当てはまる。いい会社に入ったからその人が立派になるわけではなく、そこで努力した人が立派な人間なだけですよね。要するに「どこでやるか、ではなく、どうやるか」ですね。

なんでもそうです。秋田だからできない、秋田だからむり、という事はないのです。どうやるか、を必死に考える事が大切です。

話はそれましたが、シアーミュージックでは「発声」につい、特に声の方向という言葉をよく聞きました。歌とは、要するに自分の体を楽器にして音を出しているという事。声帯をどう使って、

体のどこに響かせるのか?という事をイメージしました。ストレッチをする事で自分の体(楽器)をケアすること。肺活量を鍛えるエクササイズ、声の方向、母音や子音を意識して歌う事。

毎日の発声練習などなど。声を発するという事自体の基本を学んだ3ヶ月でした。おかげでただ張り上げていた私の歌い方は、みるみる響きが良くなっていきました。もともと声量はある方

だったので、この声量を良い方に使えればよくなりますよ。と先生にもやさしく言ってもらえたので、ますますやる気が出てきました。「先生、実は3月にライブするんですが、エレカシの

歌どうやったらうまく歌えますか?」先生に聞いてみました。すると、歌詞を全て手描きで起こしてくれて、注意して歌うべきポイントを赤ペン先生よろしく全部チェックしてくれたのです。

ほんと、みんな、なんてやさしいの・・。不思議とその通りに歌ってみると宮本浩次っぽくなる!!すげーよ、先生!!

こうして毎週一回のボイストレーニングをしつつ、毎週一回のバンド練習と、毎日の発声練習と、ギターの練習と、ゴルフと、ランニングと、犬の散歩と、仕事をしていると、時間が

いくらあっても足りないのです!!幸いこの時は冬だったので、ゴルフはいけない、外は走れないで比較的家の中でできる歌の練習やギターの練習はとてもいい時間でした。でも当然

いきなり歌が上手くなるわけはないのです。

バンド練習をした時、どうしても他の楽器の音を聞くと自分の声が聞こえなくて声が大きくなりがちです。練習ではできた発声が全く出来なかったり、ギターも慣れてないのでめっちや力が入って

しまって指先が痛い痛い。ピックは壊れる壊れる。でも、そんな日々が楽しくてしかたなかったのです。少しづつでもよくなってくる発声、少しづつでもスムーズになるコード進行。

あ、俺、ちょっとだけど音楽やっている人みたい?バンドマンみたいになってる?鏡に映るギターを背負ってミルハスのスタジオに入る自分をみても、このころには恥ずかしくなかったです。

 

 

 

こうして3月のライブに向けて、着々と練習は進みました。ちなみに課題曲として4曲エレカシの曲をセレクトしました。選んだのは、「風に吹かれて」「四月の風」「風と共に」

「ハナウタ~遠い昔からの物語」です。(タイトルに風がついたのはたまたまです)初ライブはこの4曲でやると決めました。たった4曲ですが素人が覚えるにはまぁまぁ大変な事です。

日程は結局ライブ会場となる「 Hookah bar 」さんの都合により、3月27日(日)に決まり、そこに向けて毎週練習しました。「たった4曲でライブ?」と思われるかもしれません。

でも、やると決めた事をやり通す事に意味があります。先生から教わった事を胸に、私は毎日、毎日発声を続けるのでした。

 

 

つづく。