2022年も終わろうとしている今日この頃、秋田は12月に入りいきなりの大雪に戸惑いながらも、少しづつ冬の空気に慣れ始めてきました。
コロナが流行し始めて3年、飲食店のスタッフがマスクをしている事に以前はとても違和感を感じていましたが、今ではそれが普通になってしまいました。できる事なら
今すぐこのマスクを外して接客をしたいのですが、時代がそれを許してくれません。コーヒー豆もご多分に漏れす値上げの波に飲み込まれ、コンテナ不足で生豆が日本に届かない日々が
続いています。商売をする身としては非常いつらい3年間であると同時に、危機感を改めて感じさせらる日々でもありました。このまま生豆が届かなかったら、私達は商売を続ける頃が
できなくなるのでは?そんな事さえ考えました。「コーヒー」一本で商いをしていくのはもしかしたら将来難しくなる日が来るかもしれない。そう思い始めた今年の夏でした。
「 コーヒーに変わる新しい商品を 」
その夏が終わると一気に季節が進み、あっという間に冬が来てしまいます。お店も夏場のお中元の需要が多いのでお盆前までが最盛期という感じで、お盆が過ぎて夏休みが明けると急に
静かになります。何か祭りのあとのような、そんな物が無しい気持ちになります。ならばこの時期にも、何かお店の顔になるような商品が作れないかと考えました。先に述べたコロナ禍において
感じたリスクを鑑みて、コーヒー以外で私達が作れるものはないか?そう考えていた時、去年のバレンタインに妻にもらったチョコレートがとても美味しかったのを思い出しました。
このチョコレートにはコーヒーが混ぜ込まれいて、しっかりとコーヒーの味も感じられて、カカオの味わいもあってとても美味しかったのです。
あれと同じようなオリジナルのチョコレートを作れないかと考えました。さっそく幾つかの業者からサンプルを取り寄せ、納得のいくクオリティだったお店にサンプルを依頼しました。
制作をお願いしたのがビーントゥバーチョコレートを専門に作る東京にある「CRAFTCHOCOLATEWORKS」さんです。*以下CCW
「チョコレートは、コーヒーとよく似ていた」
ビーントゥバー(Bean to Bar)チョコレートとは、カカオ豆から仕入れ、カカオを焙煎し、様々な工程を経て板チョコまでを一貫して行う製法です。チョコレートは、「カカオ」の風味や特徴が
その味を決めます。産地や品種によってその味は大きく変わるのです。まるでコーヒーと同じ。そんなチョコレートの奥深さに、私も徐々に魅せられていきました。CCWのチョコを食べてから
このカカオには、このコーヒーが合うなとか、カカオとコーヒーの産地が同じだったらペアリングが良さそう、などチョコレートの楽しみ方の幅が広がっていきました。CCWさんの
お店に伺って実際に製造の現場を見せてもらい、生産国ごとに味の違うチョコレートを食べさせもらいました。本当におもしろいくらいコーヒーと同じで、産地やローストに
よって、出来上がるチョコレートの味はまったく違う事に驚きました。混ぜ込むお砂糖にもこだわりがあって、カカオの香りを最大限引き出すオーガニックシュガーだけを使用。
お店でまさに「クラフト」している手作りのチョコレートでした。お店の方々の優しく丁寧な接客にとても親しみを覚えて、自分達のコーヒーが混ぜ込まれたオリジナルのチョコレート、
想像するだけでもわくわくします。私は意気揚々と秋田に帰ってきたのでした。
「いよいよ試作が完成・・だが」
いざ、チョコレートを作ろうかと考えた時に、味の違う3種類のチョコレートを作ろうと思いました。3種類あれば見た目も華やかで、選ぶ楽しみもあっていいのではないか?
3種類選ぶならお店のブレンド「#7」「#8」「#9」がちょうど良さそう。
#7はホワイトチョコで、#8ミルクチョコ、#9はビターチョコ。そんなイメージを持って早速試作をお願いしたのです。豆を最大限細かく挽いて、発送。試作はすぐに完成してきました。
わくわくしながら初めての試作をスタッフとみんなで味見をしました。感想はと言うと・・正直いまいちだったのです。なぜかというと、味の違いは感じるのですが、その違いは微妙で
#9の豆は深煎りでビターなので、チョコレート感があってわかりやすかったのですが、ホワイトチョコと合わせた#7は想像する味にはなりませんでした。
加えて、08COFFEEはコーヒー屋であり、チョコレートをメインに販売するわけではない。チョコレートが3種類も店頭に並んでは、お客様が違和感を覚えるのではないか?
という声もスタッフ間で持ち上がりました。考えが少しブレてしまっていたのかもしれないと、反省しもう一度原点に戻って、何が正しいのかを考える事にしました。
「 秋田の冬のチョコレート完成 」
悩んだ挙句、始めて作るチョコレートならば、やはりお店の定番である「#8」を堂々と使うべきではないか?というシンプルな結論に至りました。
そして、合わせるカカオも定番と言える「ガーナ産」に。ガーナ産のチョコレートは、日本で流通しているチョコレートの約8割にまで上るそうです。なので、日本人が食べる
チョコレートの味は、ほぼガーナのカカオの味という事になります。それくらいなじみのある味であれば、違和感なく食べていただけると考えたのです。そして作るチョコレートは
「1種類だけ」にしました。
ですが、先に書いたように、カカオも、コーヒー豆も産地や品種によって味わいが大きく変わります。この味の違いこそ、このチョコレートプロジェクトの最大の醍醐味だと考えています。
なので、毎年カカオとコーヒー豆の組み合わせを変えて、毎年違う味のチョコレートを作ってはどうかと考えました。そして、販売期間は秋から春までの期間限定。《秋田の冬のチョコレート》
として販売していく事に。秋田は冬が長いので、「今年の冬は雪多いかな?」とか「去年の冬は雪かき大変だったな」とか毎年秋が終わる頃には挨拶を交わすようにこの話になります。
どちらかというと億劫な季節である冬が、このチョコレートを待ちわびて、少し楽しみな季節になってもらえたら嬉しいなと思ったのです。
改めてCCWさんには手間をおかけしてしまいましたが、快く方向転換に了承いただき、改めて試作をお願いしました。「ブレンド#8」×「ガーナ産カカオ」の定番チョコレート。
新商品として、スタートするにはこの組み合わせしかない。きっとみんなが美味しく食べてくれる味になるだろうというイメージをもってお願いしました。
試作が届いて、祈るような思いでチョコを頬張りました。「あ、これなら自身をもって販売できる」と直感的に感じました。口の中でゆっくり溶けていくチョコレートは、
まるでコーヒーとチョコレートを一緒に食べているようにまろやかで、時間をかけてゆっくりと、口の中の温度で溶けるのを待ちながら食べるのが最高に美味しかったです。
よし、味は決まった。ようやく方向が見えてきて、最後にとりかかったのが「パッケージデザイン」でした。
「 冬ちゃん、誕生 」
パッケージデザインにも苦労しました。デザインにはいつもお世話になっている「澁谷デザイン事務所」の澁谷和之さんに入っていただき、何回にもわたって打合せを繰り返しました。
今回難しかった点は、世の中にある「チョコレート」というお菓子が、すでにどれもパッケージがおしゃれで、かわいいものばかりだったという点。すでにこの市場で、
とびぬけたかわいいパッケージを作るのは無理に等しいと思いました。そもそも「チョコレート」という商材自体がおしゃれ。おしゃれな食べ物を、おしゃれなパッケージで販売するのは
私達がやらなくても、他のメーカーがやるのではないか?わざわざ秋田のコーヒー屋が作るチョコレートが都会的に洗練されたデザインである必要がないのではないか?というい話になりました。
秋田らしさを感じられるパッケージで、他のどこにもないオリジナルのパッケージにするために。思いついたのは、「冬」というキーワード。知り合いの子供に「ふゆちゃん」という子がいてね、
あの子もそろそろ小学生かな?なんていう他愛もない会話からでした。その「冬ちゃん」をパッケージにしてはどうか?その子が成長していく姿と、毎年変わるチョコレートの味、そして
秋田の風景を「池田修三」や「勝平徳之」よろしく「版画」で掘るというのはどうか?これこそ我々が表現するべき「秋田」の「コーヒー屋」の「チョコレート」のパッケージデザインだと
いうのが私達が導き出した結論でした。こうして版画を澁谷さんが掘ってくれて、それをパッケージにするという他ではまねのできない独特のパッケージが完成したのです。
紆余曲折を経て、ようやく完成した08COFFEEオリジナルチョコレート「冬ちゃん」がこちらです。
先にも述べた通り、ガーナ産のカカオを70%使用し、ブレンド#8を細かく磨り潰した物を加えた「コーヒーチョコレート」です。使用するお砂糖はオーガニックシュガー。
製造は東京世田谷にある「CRAFTCHOCOLATEWORKS」さん。
今年は第一弾、この味は今年限定です。販売期間は来年4月頃までの予定です。無くなり次第販売は終了します。
専用のギフトBOXもご用意しております。ご自宅用にも、贈り物にもぜひご利用いただければ嬉しいです。
来年以降は、9月頃から製造を始め、少し長く販売できるようにしたいと思います。もちろんパッケージも、味わいも毎年変わります。冬ちゃんがどう成長していくのかもお楽しみいただければ
と思います。
最後に、開発までには本当に紆余曲折あり、ご迷惑をかけてしまった方もいらっしゃいます。こうして最終的に形にできた事を嬉しく思いますし、この商品を大事にしていきたいと思っています。
どうぞみなさまよろしくお願いいたします。