卸先探訪vol.3 

シリーズでお伝えする『卸先探訪』です。

 

色んな方にお話をうかがって、記事にするのは思いのほか骨の折れる作業で、

仕事としてやるにはあまりにも大変だと感じます。編集者の仕事の大変さを実感する今日この頃。

でも取材となると、普段話せない自分が気になっている

人とお近づきになれるというメリットも・・・。

以前あるニュースのスポーツ担当のアナウンサーが、自分がファンであるという選手にインタビューをしていました。

その選手が好きすぎて、プレゼントを渡したり、ハグしてもらったりする映像がTVで放送されたのですが、

視聴者からは「公私混同だ」「これがニュース番組でやることか」など非常に不評だったそうです。

私も個人のブログとは言え、気をつけなければいけません。

という事で今回お話をうかがったのがこの方。

*はい。完全に混同してます。

 

佐々木希美さん。

秋田市亀の町にある「 KAMENOCHO STORE 」でコーヒーを担当していらしゃいます。

男性が多いこの業界(特に秋田では)において、女性でコーヒーを仕事にしたいと思う人は

なかなか稀有な存在だと思います。どういう想いをもってコーヒーに携わっているのかを聞いてきました。

 

 

 

 

 

 

『自分の味が出したくて』

 

 

 

 

 

佐々木さんは以前の職場もコーヒーを提供するお店だったといいます。

コーヒーはよく、職人技のように語られる部分がありますが、決してそうではなく、

理論と理屈に基づいた上においしさがあります。以前の職場ではそういう部分に

物足りなさを感じたといいます。

「もっと美味しいコーヒーがあるはず。私は私のコーヒーの味を出したいと思った」

そう思ったとき、それができそうな場所が今の  KAMENOCHO STORE だったそうです。

選んだ理由はもう1つあり、

当時まだ「KAMELEON COFFEE」という小さなコーヒースタンドだった頃、そこには今では幻の

存在のように語られるバリスタ鎌田さん(今は東京)という人がいて、彼の淹れてくれたカフェラテが

今までに飲んだ事のない味だったと記憶に残っているそうです。鎌田さんはそれまで秋田になかった

コーヒースタンド、バリスタ、という概念を秋田にもたらしてくれた貴重な存在でした。

私も彼に大きく影響を受けた1人です。同業者として尊敬する人物でもあります。

「どこのお店にいっても必ずカフェラテを頼むんです。カフェラテにはバリスタの技術が凝縮されている

と思っていて。鎌田さんのそのカフェラテは特別でした」

自分もこんな味を出してみたいと、今の職場を選んだそうです。

 

 

 

もともとコーヒーがそんなに好きではなかったという佐々木さん。でも、スペシャルティコーヒーは、

「抽出次第で飲めるし、美味しいし、感動がある」とどっぷりはまっていっていきます。

働き始めてしばらくすると、スタッフの入れ替わりがあったりして、コーヒーを担当する事に

なります。

でも始めから上手にコーヒーが淹れられたわけではなかったそうです。

「勉強もしたし、県外から講師に来てもらってトレーニングを受けました。それによってだいぶ味も安定してきたと思います」

今は3つのロースターから豆を仕入れているそうです。(そのうち1つが08COFFEE)

それぞれのロースターの特性に合わせてエスプレッソに使ったり、ドリップで提供したり、販売したりしています。

 

 

 

 

『男の人とは違う、斜め上から見るコーヒーの世界』

 

 

 

 

コーヒーに携わる仲間達と(佐々木さん以外は全て男性)カッピング会

なるものを開催して、

「10種類以上のコーヒーを持ち寄ってカッピングしている」とのこと。

そんなコーヒーマニアの男性達に囲まれながら、佐々木さんから見て

秋田のコーヒー業界はどう見えるのか聞いてみました。

 

 

 

 

 

「正直少しズレを感じますよ。男の人は、もっと美味しく、もっと美味しく、味を追求したい。とコーヒーに向き合いますが、

私は、喜んでほしい、喜んでほしい、受け入れてほしい。と考えてしまいますね」

「この美味しいコーヒーを飲んでるお客さんの顔が見たいと思います」

もし自分がお店をするなら?の問いには、

「お客さんの顔が近く見えるコーヒースタンドがいい」

と笑いながらおっしゃっていました。

なるほど。

楽しんでほしい、という気持はとても大事だなと思いました。

おっしゃるとおり、男の人は凝り性なので自分の世界に浸りがちですが、

客観的な視点で自分を見たり、なにより、そのこだわりがお客さんに伝わっているのか

をきちんと理解しておかなければ、ただの自己満足になってしまいます。これは私自身に

も言える事だと思いました。反省反省。

 

 

 

 

 

『ロースターはアーティストで、バリスタはデザイナー』

 

 

 

 

「味を追求している人にとっては、優劣がほしくなると思うけど、コーヒーは自分が好きなほうに

進んで行かないと美味しくならないと思う。言われたとおりにやっても、それを美味しいと思うか思わないかは、

自分の意思で決めるようにしています。その方が絶対お客さんに伝わるから」

 

 

更には、

 

 

 

「児玉さんはロースターだからアーティストで、私はバリスタだから、デザイナーだと思っている。

コーヒーをデザインして、お客さんに提供したいです」

とおっしゃいました。

他にも色んなコーヒーの話をしました。(おかげで編集に時間がかかりましたが)

彼女ほどの高い意識と情熱をもってコーヒーに携わっている人が秋田にもいるという事実に

驚きと同時に嬉しさも感じたのでした。

時代の流れもありますが、同じような人がこれからどんどん増えてきて欲しいと思います。

 

 

 

 

 

数年前、1人の若者がお店を訪ねてきました。彼はコーヒーが好きで、コーヒーに係わる

仕事がしたかったのですが、私もまだお店を始めたばかりで、人を雇うほどの

余裕がありませんでした。結局彼は秋田では仕事がなく、東京へ行きとあるコーヒー屋さんで

働く事になるのですが、今では1つのお店を任せられるほどの人材に成長しました。

その時思ったのが、この情熱を秋田で開花させてあげられるお店がないといけない。

自分が、コーヒーを仕事にしたいと思う若い世代の人達に、その情熱やスキルを存分に

発揮できる場所を作ってあげなければいけないのではないか?という事でした。

これからの秋田のコーヒー、東北のコーヒーを考えた時にそういうお店があるという事が

若い人達への希望となるのではないかと思いました。

時が経って今、自分がそういう器であるかと言われれば、

正直自信はありませんが、当時の自分の想いが蘇ってきました。

ただ、秋田でも、自分のようにコーヒーでご飯が食べられるんだよという事、

税金も年金もちゃんと払って、結婚して家庭を持ち、子供を育て、家も買えて、車も乗れて、

休みの日は映画を見たりたまにゴルフに行くくらいの生活はできるんだよ。という事を証明しているつもりです。

 

それが希望か?自分ならもっとやれる

そんな事を言う若い人達が僕なんかを押しのけ秋田で起業してくれることを期待しています。

そしたら私は、縁側でわたげと一緒にコーヒー飲んでます。。

佐々木さんありがとうございました。

休みの日はもっぱらゲーマーです【笑】